2025年10月14日 10:00

人手不足も技術継承も――リコーが示すAI活用の最前線

【主催者ブース】AIエージェント、マルチモーダルLLM(株式会社リコー)

「ビジネスチャンスEXPO in TOKYO」の注目出展者に、出展内容や見どころを伺う本企画。今回は株式会社リコーAIサービス事業本部 本部長の梅津良昭氏にお話を伺いました。生成AIの活用が経営課題として注目される一方で、「何から始めればいいか分からない」と迷う企業は少なくありません。リコーは、従来のAIが苦手としてきた図面やグラフを読み解く「マルチモーダルLLM」と、誰でも直感的に使える「AIエージェント」を開発。人手不足や技術伝承といった企業共通の課題解決に挑んでいます。企業に蓄積された“秘伝のタレ”ともいえる知識を未来へ継承する―—リコーの最新技術に迫ります。

読めなかった情報を解析できる「マルチモーダルLLM」

生成AIの進化により、文章を理解するAIはすでに身近な存在となりました。しかし、製造業やエネルギー分野で使われる図面やフローチャート、マニュアルは、従来AIが不得意とする領域です。細部まで描き込まれた設計図や複雑な手順書には業務の核心が詰まっていますが、AIにとっては“読めない情報”でした。

リコーが開発したマルチモーダルLLM(大規模言語モデル)は、テキストだけでなく画像や図表、グラフといった複数の形式(モード)の情報を同時に理解できるAIです。人間の技術者が図面を読み解くように解析できるのが特長で、例えば「過去の金型設計図を呼び出してコストを比較する」「改良版を設計する」といった具体的な活用が期待できます。

「日本の現場では、図や表に知識やノウハウが凝縮されています。そこを読み取れるようになったことで、ようやくAIが本当の課題解決に踏み込めるようになったのです」と梅津さんは強調します。

応用範囲はものづくりに携わる製造業に限らず、例えば保険業界では、成約に必要な複雑なフローチャートを含むマニュアルをAIに読み込ませ、業務効率化に役立てる取り組みがすでに始まっています。

現場に合わせて進化する「AIエージェント」

どんなに優れたAIも、現場で使いこなせなければ意味がありません。同社は、プログラミングの知識がなくても、まるで同僚と会話するように活用できる「AIエージェント」を開発。ビジネスチャンスEXPO in TOKYOの会場には、音声で対話しながら業務をサポートする等身大のバーチャルヒューマンも登場します。

「自然な会話で質問に答えたり業務を支援したりできるのが特長です。専門知識のある人だけでなく、誰もが直感的に使える環境を整えたいと考えています」と梅津さん。

企業にとっては、問い合わせ対応や新人教育、営業支援など幅広い活用が可能です。基本的な業務手順をAIに尋ねれば瞬時に回答が得られ、マニュアルを探す手間も省けます。これまで経験や勘に頼っていた暗黙知を補い、業務効率を大きく高めることが可能になります。

さらに独自開発した生成AIアプリ開発プラットフォーム「Dify(ディフィ)」を使えば、現場の担当者自身が「営業支援AI」や「売上集計AI」を簡単に作成可能。リコー社内ではすでに4500を超えるAIエージェントが誕生しており、敬語変換ツールのような身近な工夫から営業支援、売上集計といった本格的な業務改革まで、現場発のイノベーションが次々に生まれています。

日常業務から始められる、安心のAI活用

AI導入と聞くと、大規模なシステムや高額な投資を思い浮かべがちですが、実際にはもっと日常的な業務から取り入れることができると梅津さんは言います。例えば、日報や議事録を自動で要約したり、社内に散らばるマニュアルから必要な情報を瞬時に探し出したり。こうした小さな活用が積み重なることで、人材不足を補い、知識を次世代へつなぐ仕組みづくりに繋がっていきます。

セキュリティ面にも配慮し、インターネット経由で利用できるクラウド型に加え、自社サーバーなど閉じた環境(オンプレミス)での利用も可能。外部に情報を出さず、安全にAIを活用できる体制が整っています。

「企業の“秘伝のタレ”ともいえる重要データをクラウドに預けることに抵抗がある企業様も、オンプレミスで使えば安心です。製造業や金融、行政、エネルギーなどデータを外部に出せない分野でも導入できるのが強みです」と梅津さん。

ノウハウ継承と人手不足に応える新たな“労働力”

AI活用のスタート地点は、必ずしも大掛かりである必要はないと梅津さん。
「まずは“自社の図面やマニュアルをAIに読ませる”ことから始めていただければ十分です。知識を資産化し、次世代に繋ぐための強力なツールになります」

中小企業では、ベテラン社員の退職でノウハウが失われたり、人手不足で現場が回らなくなったりする課題がすでに深刻化しています。
「今後、人口減少が加速する日本では労働力不足が大きな課題になります。AIエージェントがロボットに搭載され、人と同じように振る舞えば、人間の作業を代替できる日も遠くありません。AIは単なる業務効率化の道具ではなく、社会を支える新たな労働力としての役割を担っていくことが期待されます」

日本ならではの知見をAIに反映

リコーは今年7月、マルチモーダルLLMを無償公開しました。公開からわずか数カ月でダウンロード数は1000件を突破し、想定を大きく上回るペースで多くの企業が導入を始めています。

「日本では緻密な図表やフローチャートを用いて情報を整理する文化があります。会議資料や業務マニュアルにも詳細な図解や工程表が盛り込まれ、そこに独自の知見やノウハウが詰め込まれています。こうした文書を正確に理解できるAIは世界的にも珍しく、日本ならではの文化を反映しながら成長しています。現在集まりつつある知見は次の世代のAIに生かし、順次バージョンアップを重ねていきます。これにより、これまで自動化が難しかった日本特有の業務課題の解決にも繋がると考えています」と梅津さん。

オープンイノベーションを通じ、各企業のデータと知識を取り込みながら進化を続けていることが、この技術の大きな強みです。現場ごとの多様なニーズに柔軟に応えられるのは、この“開かれた仕組み”があるからこそといえます。

会場で体感する“現場を変えるAI”

AIは今や“遠い技術”ではなく、日常業務を支える身近なツールへと進化しています。同社が出展するAIエージェントとマルチモーダルLLMは、その象徴的な存在です。

「『うちの会社にある、あの膨大な資料や図面。どうやったら活用できるのか…』。そうお考えの方は、ぜひ私たちのブースにお立ち寄りください。リコーが最も力を入れているのは、現場に眠るドキュメントの価値を最大限に引き出すことです。会場では、等身大のバーチャルヒューマンが皆様をお迎えします。AIと直接対話する新しい体験を通じて、AI活用のヒントを一つでも多く持ち帰っていただければ幸いです。諦めかけている現場の課題も、AIなら解決できるかもしれません。ぜひお気軽にご相談ください」と梅津さんは呼びかけます。

現場の知恵を守り、新しい価値を創り出すAIの可能性を、ぜひ会場で体感してください。

株式会社リコー
東京都大田区中馬込1-3-6
https://www.ricoh.co.jp/
主な事業内容:デジタルサービス、デジタルプロダクツ、グラフィックコミュニケーションズ、インダストリアルソリューションズなど

 

 

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