2025年11月5日 15:00
【ものづくり】ヒーター機器(株式会社サカエ)
「ビジネスチャンスEXPO in TOKYO」の注目出展者に、出展内容や見どころを伺う本企画。今回は、家庭用温水器から航空機、半導体製造装置まで、幅広い分野でヒーターを提供する株式会社サカエ(東京都港区新橋1-11-4三栄ビル)代表取締役社長・松本弘一氏にお話を伺いました。同社のヒーターは、私たちの暮らしや産業インフラを支える“縁の下の力持ち”。見えない場所で確かな“熱”を生み出し続けています。今回の展示では、世界最高温度500℃を実現したフレキシブルヒーターなど、最新技術も公開予定。長年培った熱制御のノウハウで、ものづくりの現場に新たな可能性を広げます。

ヒーターと聞くと、家庭用の暖房器具を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし株式会社サカエの技術は、暮らしのあらゆる場面に広がっています。
「当社のヒーター技術が活躍する分野は、衣食住のすべて。家庭用住宅設備から半導体製造装置、航空機、鉄道といった社会インフラまで、すべてがターゲットです」と、松本氏は語ります。

その言葉通り、同社の製品は驚くほど身近な場面で使われています。例えば、大手コンビニエンスストアのコーヒーマシンやスムージー機に使われているヒーター。スムージー機では、氷を解かすお湯にも使用されますが、使用後に60℃のお湯で容器を自動洗浄する機能にも同社のヒーターが使われており、こうした仕組みが日々の“おいしい体験”を陰で支えています。また、家庭用深夜電力温水器では国内シェア95%を誇り、航空機や新幹線のトイレで温かいお湯が出る――その快適さの裏にも、同社のヒーター技術が息づいています。
多様な分野で使われるヒーターには、設置環境によって異なる課題もあります。なかでも大きな問題となるのが“水による腐食”。例えば、塩分を多く含むうどん店の茹で釜では、塩分が金属を腐食させるため、一般的なヒーターだと短期間で表面が傷み、穴が開いてしまうこともありました。この問題に対し、同社は耐食性に優れたチタン製ヒーターを開発し、長寿命化を実現。さらに、水質が地域によって異なる家庭用温水器では、特殊なメッキ加工を施すことでメンテナンスの手間をほぼなくしました。
「水に含まれる成分が腐食や劣化の原因になります。当社では使用環境に合わせた設計で、長く安心して使えるヒーターを提供しています」と松本氏。

用途に応じてステンレス、銅、チタンなどの素材を使い分け、ニッケルメッキなどの加工技術で耐久性をさらに向上。こうした工夫により、「交換頻度が大幅に減った」「メンテナンスの手間が省けた」といった声も寄せられています。
同社の強みは、こうした素材や加工技術の改良にとどまりません。ヒーター単体の改良から一歩進み、制御装置や周辺機器と組み合わせたシステム提案へと発展。現場の生産性や品質向上にも貢献しています。
同社では、単品のヒーターだけでなく、周辺機器や制御システムなどを組み合わせたユニット製品としての開発・供給も行っています。なかでも象徴的なのが半導体製造の分野です。半導体チップの元となる円盤(ウェハー)の品質は、乾燥工程でどれだけ均一に加熱できるかに左右されます。温度のばらつきが生じると、歩留まり(製品の取れ高)が下がってしまうのです。
そこで同社は、ヒーターだけでなくウェハーを載せる台座や制御装置までを一体化したユニットとして開発。さらに、製品を実際に作る前に熱解析シミュレーションを用いて、どの位置をどのように加熱すれば温度を均一にできるか、事前に検証しています。

「ヒーター単体では温度ムラが出ることがありますが、ソフトウェアで通電を制御するゾーン制御により、より精密な温度管理が可能になります。こうしたシミュレーションを通じて、生産前の段階から最適設計を実現し、開発期間の短縮と品質向上の両立を図っています」と松本氏。
サカエのヒーターが多くの顧客に支持される理由は、その確かな品質にあります。長寿命で故障が少なく、過酷な環境下でも安定した性能を発揮する――まさに“メイド・イン・ジャパン”ならではの信頼です。
「コストでは中国に、最先端技術ではアメリカに及ばない部分もありますが、日本には“品質で勝つ”という強みがあります。お客様の使用環境に合わせ、細部まで調整を重ねることで信頼を積み上げてきました」と松本氏は語ります。

腐食に強いチタンヒーターの採用や、表面加工による耐久性向上など、地道な改良の積み重ねが高く評価されています。誠実なものづくりを貫く姿勢こそが、同社が長く選ばれ続ける理由です。
近年では、より過酷な環境にも対応できるヒーターの開発に取り組んでいます。その成果が、特許出願中の「500℃まで加熱可能なフレキシブルヒーター」。これまで自由に曲げられるタイプのフレキシブルヒーターは耐熱温度が200℃程度に限られていましたが、新技術により、その常識を覆しました。

この高耐熱化によって、これまで利用が難しかった分野での応用が一気に広がります。例えば、工場の配管に巻き付けて熱を逃がさずエネルギー効率を高めたり、より高温処理が求められる半導体製造装置や包装機械に組み込んだりと、さまざまな展開が期待されています。
「正直、どんなニーズがあるのか、まだ私たちにも分かりません。だからこそ今回の展示会で多くの業界の方に実物を見ていただき、『これなら応用できそうだ』という新しいアイデアを一緒に考えたい」と松本氏。自社の技術を囲い込まず、外部との対話を通じて新たな価値を生み出す――その開かれた姿勢こそ、同社のものづくりの原点です。
今回のビジネスチャンスEXPO in TOKYOでは、ヒーター単体だけでなく、実際の機器に組み込まれたユニット製品も展示され、暮らしと産業を支える“見えない熱の力”を実際に体感することができます。

「ブースでは、航空機に搭載されている温水器ユニットや、半導体製造装置の心臓部など、普段はなかなか目にすることのない製品の実物を多数ご紹介します。また、当社の強みである熱解析のシミュレーション映像もモニターでご覧いただけます」と松本氏。
さらに、新開発のフレキシブルヒーターをはじめ、カートリッジヒーター、シーズヒーターなど、さまざまな製品を間近で見られるのも大きな見どころです。
「“熱を制御する技術”は、どんな業界にも応用の可能性があります。温度管理に関するお困りごとがあれば、ぜひ気軽にご相談ください。課題解決のヒントを一緒に探していければと思います」

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