2025年11月7日 12:00
【ものづくり】環境配慮型素材〈カフェテックス、パプティック-FS トリンガ、キナリト LEAF〉(株式会社竹尾)
「ビジネスチャンスEXPO in TOKYO」の注目出展者たちに、出展内容や見どころをインタビューする本企画。今回は、1899(明治32)年創業の紙の専門商社、株式会社竹尾(東京都千代田区神田錦町3-12-6)の新素材営業部 課長代理の名取美穂さん(写真右)と、同部 主任の鳥光美緒さん(写真左)にお話を伺いました。
デジタル化が進んで紙の印刷物や製品が少なくなり、環境問題が世界的な課題として認識される今、同社が目指すのは次世代の“紙”がつくる新しい世界です。

株式会社竹尾はこれまで、質の高いファインペーパーをはじめとする紙の研究・開発・販売を行ってきました。取り扱う紙の種類は約300銘柄・約7000種類。特に、印刷メディアとして使われる紙の特性に着目し、主な取引先は出版社や印刷会社が中心でした。
長年にわたり、FSC®森林認証紙や再生紙など、環境に配慮した素材を主に取り扱っており、環境負荷の低減にも尽力してきましたが、現在、その事業のターゲットとミッションは大きく変化しているといいます。

「紙は印刷用に限らず、さまざまな用途に使える可能性と特性を持つ素材です。近年は紙の新しい可能性をさらに追求し、さまざまな製品やプロダクトに応用できる素材として、よりサステナブルな社会に貢献する新しい紙の使い方を提案しています」(名取さん)

ターゲットは、特定の業界にとどまりません。例えば、「プラスチックから紙に置き換えたい」「サステナブルな素材を使いたい」といった意識を持つ、あらゆる企業が対象です。
同社はこのニーズに応えるためにも、長い歴史に培われた紙の知見を活かし、プラスチック代替品のほか、最新技術から生まれた紙を使ったプロダクト、壁紙などのインテリアまで、新しい事業領域を広げています。
今回の出展では、主に3つの新しい素材を紹介。どれも従来の紙の概念を覆す機能性を持つ、サステナブルな新素材です。
「カフェテックス」は、その名からもイメージできるように、コーヒーフィルターの製造工程で出る打ち抜き端材を再利用したリサイクル和紙撚糸です。もともと再生処理に困っていた素材をどうにかしたいと、開発がスタートしました。コーヒーフィルターは水に溶けにくい性質があるため、再生紙原料に活用出来ない難処理古紙として、従来のようなパルプ化が難しい素材。
「約1年半の試行錯誤を重ねて、パルプ化に成功しました。まず薄い和紙にし、それをマイクロスリット、撚糸加工することで紙糸に仕上がります。」(鳥光さん)

濡れても破れにくい古紙100%の紙糸「カフェテックス」は軽く、壁紙や椅子の座面、バッグなど幅広い製品への展開が可能。さらには、靴のアッパー(生地)にも応用が進んでいます。従来の紙製品では考えられなかったジャンルへの採用を目指し、さまざまな製品への提案を進めています。

「パプティック-FS トリンガ」は、フィンランド産針葉樹林パルプを使用したFSC®森林認証紙。一般的な不織布と異なり、石油系化学繊維は使用していません。触ってみると、布のようなしなやかさと強度があり、ナチュラルな温もりが手に伝わります。
「プラスチック製品に比べて静電気が起きにくく、摩擦音も少ないので、アパレルの内袋としても使いやすい素材です。縫製も可能なので、巾着やポーチなどにも。ショッピングバッグ、ホテルのアメニティポーチなどへの提案も進めています」(鳥光さん)
プラスチックの使用量を削減するだけでなく、企業の環境配慮への取り組みのPRに貢献できることも、この素材の大きな魅力となっています。
2025年4月に取り扱いを開始したばかりの「キナリト LEAF」は、木材パルプを主原料とした不織布です。柔らかな手触りで、やや起毛感のある優しい質感は、まるで繭のよう。一般的な化石由来の不織布に比べてプラスチックの使用量が少なく、この素材も環境に配慮して開発されています。
熱プレス成型によって眼鏡ケースなどに応用できるほか、エンボス加工や箔押し加工といった立体的なデザイン加工にも対応。新たな用途への展開が期待されています。

これらのユニークな素材は、環境負荷を低減するだけではなく、製品に新しい価値を与えられるのが大きなメリットです。
「単なる紙の代替ではなく、手触りや質感、加工性などを通じて、使う人に新しい体験や価値を提供できるのではないかと考えています」(鳥光さん)
デジタル時代の「紙」は、情報伝達の用途に留まらず、感性を伝えるメディアとして、より広く、また深い意味を持つ素材となっています。
同社は、この変わりゆく時代において、デザインとテクノロジーを通じて多くの優れた製品づくりを行うほか、紙の専門商社として、紙文化の発展に貢献することもミッションとして掲げています。
日本国内の紙関連業界で唯一かつ最大規模のイベント「竹尾ペーパーショウ」を1965(昭和40)年から開催しているほか、「見本帖本店」をはじめとするショールームの運営・展示会の開催、紙をめぐるさまざまなコンテンツを掲載する機関誌「PAPER’S」の発行、紙とデザインの文化・歴史にまつわる書籍の出版など、多彩な方法で、企業や学生など幅広い層に向けて紙に関する情報を発信しています。
また、多くのデザイナーやアーティストと一緒に、創造性を刺激する素材としての紙を生み出してきたことも、同社の強みです。

今回も、「紙って印刷に使われるだけでなく、こんな使い方もできるんだ」と広く知っていただきたいと、出展を決めたといいます。
「私たちが所属する新素材営業部は2024年12月に発足したばかり。今まであまりつながりのなかった企業や市場に、新たな素材をぜひ提案させていただきたいと思っています」(鳥光さん)
「出展ブースでは、ぜひ実際に素材を触って、その質感や機能性を気軽に体感していただきたいですね。これらの素材を単に現行品の置き換えとして提案するのではなく、紙に置き換えることによって、来場された企業やその商品の付加価値を一緒に高めていければと考えています」(名取さん)

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